私たちは周囲の情報を五感を駆使して感知している。なかでも視覚情報は人間が受け取る情報の90%を知覚しているが、そこでは他の感覚器官からのわずかな情報も無視できない。人間は本質的には<共感覚>とも言うべき、五感の融合により物事の本質を捉えている。そしてそのことが記憶を高め、感動を演出する影の要因となる。これからのデジタル情報社会においてはいかに五感的印象をもたらす情報の奥深さがあるかどうかが、情報の伝達や表現において無視できない。FantaPixはデジタルな画像の中にアナログ的光を再現する技術である。デジタルネットワークの進展のなかで、ともすれば捨象されてしまう情報のかすかな印象性を、その優れた技術により、保持再生できる。デジタルの欠点を補い、人間のもつ五感コミュニケーションの要求に対応する画期的技術ではないだろうか。
平林 千春 Chiharu Hirabayashi
1947年長野県生まれ。法政大学社会学部出身。雑誌編集長、フリージャーナリスト経て、コミュニケーションシステム研究所を設立。東北芸術工科大学教授を兼ねる。
主要著書に『コラボレーション・マーケティング』『ビール戦争―成熟市場突破のマーケティング』『一人勝ちマーケットを狙え』『21世紀型ヒット商品の条件』『実践 ブランド・マネジメント戦略』『ヒトはなぜその商品を選ぶのか』など。